驚きに目を見開く。大きさに見合わず、全く気配を感じなかった。
「さっきの人間どもの一味か。一人で寂しかったなぁ」
そう言いながら大きな魔物は、牙を見せて笑った。わざと見せているようだ。
「あっ、ひ、ぃやだ…ッ」
「いい土産ができたぜ。おい!」
それほど大声ではないのに、ビクっと体が震える。
呼びかけた声に反応して、他の魔物達も戻ってきてしまった。
「人間じゃねぇか。逃げ遅れたのか?」
「さすがカシラ!早く行きましょう。アロンが帰ってくるとめんどくせぇ」
ルツを見た途端、魔物たちの目が爛々と光り、凶悪な笑みを浮かべる。
「助けっ嫌だ!ッ嫌だぁ!!」
背中の痛みは、神経を通って確かに脳に届いている。しかしそれに構う余裕はなく、カシラと言われた魔物の手から逃れようと、躍起になって身を捻り、叫んだ。
「うるせえな」
舌を打ち、魔物たちに目を配る。すると一人が心得たように、太めの麻縄を持ってきた。
「黙らせろ」
「へい」
「やめろ…見逃してくれ…んぐ!ふぐゥウッ」
交渉の余地はなく、魔物はルツの口に縄を噛ませる。粗い縄だからか、口を動かすと、チクチクと擦られて痛い。慌てて解こうとするも、後ろ手に縛られてしまった。
「さあ楽しい時間の始まりだ」
ルツを戦利品のように掲げて、先頭を切って歩いて行く。
周りの魔物たちは、わざとルツを怯えさせるように口々に汚い言葉で囃し立ててくる。
先ほどやっとの思いで抜け出した村に結局戻ってくることになってしまった。
ちらりとアロンの家が見えて、後悔と情けなさでじわりと涙が出てくる。
魔物たちは、アロンの家からなるべく遠い所へ向かっているようだ。
途中で見張りを何人か置いて念を入れる。それだけ、ナンバー2のアロンはカシラにとって面倒な存在なのだろう。
「交代で見張りをつけろ。アロンを近づけさせるなよ。 人間かぶれのバサラもな」
「あいつらは、あのマドとかいう女と楽しくやってるんでしょうからね」
「こっちはこっちで楽しもうぜ。ほら人間、これがお前のお立ち台だぞ」
そう言われて恐々と見ると、腰の高さほどの台が目の前にあった。
抵抗も虚しく、足を開かされて、台を跨ぐように乗せられる。
そのまま力で押さえつけられて、うつ伏せにさせられた。
「足を固定しとけよ」
またあの粗くて硬い縄がルツの動きを封じていく。
すぐにビリッという音がして、履いていたものが取り払われ、尻が外気に晒されたのが分かった。ブルリと震えると、どっと魔物から笑い声が上がる。
「カシラ。どうです?最初に一発」
「ふグッ、うぅウー!」
興奮を隠せない声で、魔物が尋ねる。あんな大きな魔物に貫かれたら、死んでしまう。口の端が切れるのも構わずに必死に懇願の悲鳴をあげた。
「そりゃあ酷だな。俺らの子供を産む大事なケツだぜ?
小さいヤツからの方がいいだろ」
ルツの懇願が届いたのか、カシラは愉快げにそう言って、晒されている尻をぺちんと叩いた。
「やっぱりカシラだ。優しいねぇ」
「油も持ってきましょうか」
魔物たちが手を叩いて喜んでいる。
「まぁ結局カシラの番になったら、どのみち裂けると思いますけどね。ヒヒヒ」