「チっ、いいところで来やがって」
腰をぐっと押し付けたまま、カシラは舌打ちをした。
そしてルツの中を目いっぱい広げたまま、しばらく動きを止める。体の熱を外へ逃がすようにふうふうと呼吸を繰り返した。
「ふギッ…うぅう」
ルツのほうは痛みと窮屈さに背を震わせるたび、そこが連動して太いものを食い絞めて、また苦しさにあえいでいる。気こそ失っていなかったが、意識は朦朧としていて、周りの状況は理解できていなかった。縄を噛んでいる口の周りは泡がついている。
無意識で、中のものを追い出そうと蠕動する穴を感じながら、カシラは面倒なナンバー2をどう対処するか考えた。
「・・・」
「うぐ!ひぁアッ」
ルツの太ももを押さえていた手を、台と腹の間に滑らせる。ただでさえ隙間なく固定されているところへ、大きな手が入ってきてルツの背がビクビクと跳ねた。
グリグリと腹を撫でる。少し魔術も使えるカシラは、手に神経を集中させて中の様子を探った。
「ど、どうします?カシラ…」
「・・・ハハ。変に拒まなくてもいい。来たければ連れてこい」
「いいんです…?」
「ここまで魔物の子が出来てるんじゃあアイツでもどうしようもない。それにいい考えがある」
落ち着いているカシラの様子に、魔物たちも次第にほっと息をつく。皆ナンバー1とナンバー2の衝突は出来るだけ避けたいのだ。カシラが、自分たち下っ端をアロンに歯向かわせようとするのはわかっている。
知らせにきた魔物が、見張りをしている魔物のところへ走っていく。無理に止めなくていいと伝えにいくのだろう。
考えがまとまったカシラは、再び手を人間の太ももに乗せ、ゆるゆると腰を動かし始めた。
「うっ、うぅ…ぐ」
長く入れられていたものがズルズルと出て行っては、また押し入ってくる。本来内側にあるべき薄赤いものがチラチラと見える接合部を見て、カシラは笑った。
しばらくして、のしのしとカシラの次に大きな魔物がやってくる。アロンだ。
「よぉ。遅かったな」
「…逃げ遅れか」
「そうらしい。アロン、いいところに来た。お前に頼みたいことがあるんだ」
静かに人間を見ていたアロンは、カシラの言葉に視線を上げた。
「ふ、ぅ、ぅぎッ」
台に固定されている人間がカシラの動きに合わせて呻いている。どれだけそうしているのか、その目はうつろだ。
「この人間の世話を頼みたい。無事に腹の子が生まれりゃ、次はお前の子を孕ませてもいいぞ?」
「えぇっ、カシラ、それは…」
周りで見ている魔物たちが不服そうな声をあげる。人間がいれば孕ませたいと、知性の低い魔物ほどその衝動が強くなるのだ。しかしカシラのひと睨みで、ぱっと口を閉じた。
「・・・面倒そうだ」
「俺の命令が聞けねぇのか?」
ナンバー1はこの俺だと圧をかけるようにじっとアロンを見る。アロンはちらりと人間を見て、ため息をついた。
「わかった」
「ありがとよアロン」
頷いたナンバー2に、カシラは満足げな笑みを浮かべる。アロンにも子孫を残したい欲求があるとカシラは考えたのだ。かつてアロンの父がそうだったように、自分の子が出来ればアロンの目はそちらに向くはず。ナンバー1の地位を脅かすものは少ないほうがいい。
そう思うとカシラは上機嫌になり、緩やかに動かしていた腰を早めた。
「ひぃ!ギッ、フひッ、イっ…!」
ガサガサに枯れた声が下から聞こえる。視界がぎゅっと狭くなるような感じがして、カシラも息を荒げながら、いよいよの時を迎えようとする。
「カシラ」
「っ、あッ?!なん、だ!?」
しかしいいところでアロンが話しかけてきた。アロンは自覚していないかもしれないが、邪魔されるのはこれが二回目であるカシラは、イライラと意識をアロンに向ける。
アロンは静かな、それでいてギラついた目をしながら、カシラを見ていた。
「俺が欲しいのは、子じゃない。
その人間だ」